「日本人たるもの米を食せ！！」

そんな真田の一言から立海男子テニス部に、米の嵐が吹き付けた。








　　　　　　　　　米戦争









「はぁ・・・ったく何で米なんか・・・」

幸村サマは何かグチグチと言っていました。

「ゆ、幸村部長は米嫌いっスか？」

恐る恐る聞く赤也。

「嫌いじゃないよ。寧ろ好き」

けど、返ってきたのは予想以上ににこやかな笑顔。

「・・・じゃあ何が不満なんっスか？」

「弦一郎が部長の俺を差し置いて好き勝手してるから」

「（・・・ああ、この人は自分が一番じゃなきゃ気に食わない人だったな・・・）」

「うん」

「って、何、人の心読んでるんっスかッ？！」

「読んでるんじゃないよ。後ろの人が教えてくれてるんだよ。ふふふ」

「一緒一緒ッ！！てか、後ろの人って何？！」

赤也は慌ただしく幸村サマの相手をしている。

「俺、昔からみんなに見えないものが見えるんだよね・・・」

「そ、それって・・・まさか・・・」

「ふふ。あ、赤也の後ろに・・・」

「ギャ―――――ッ！！！」

「弦一郎が・・・って言おうとしたのに・・・」

「何だ？騒がしいな」

幸村サマの言うとおり、赤也の後ろには真田が立っていた。

「やぁ、弦一郎。季節外れの怪談話をしていたんだ」

「くだらんことをするな」

「可愛い後輩とのスキンシップだよ」

そんな幸村サマと真田の会話に赤也が入ってきた。

「ああああああの、幸村部長・・・見るってマジで・・・」

「さぁ？」

にこやかな笑顔で赤也の質問をかわし、幸村サマは真田との会話を再び始めた。

「で、可愛い後輩の後ろに立って何してたの？」

「いや、それは赤也がドアの前にいたからその後ろに立っている様に見えただけだ」

「うん。知ってる」

「では、何故聞く？」

「強いて言うなら腹癒せ」

「は？」

「まぁいいや。弦一郎何か用？」

「あ、この米をお前らにやろうと思って」

真田はその鞄にどう入っていたのか・・・と、聞きたくなるぐらいの米を出してきた。

「何っスか？この大量の米・・・」

「ああ、俺の家で作っている米だ」

「自家製なんっスか。わー、すごいっス！」

「味もいいぞ。なんたって俺が毎朝毎朝この米が植えてあった田んぼの中心で豊作の舞を踊ったのだからな」

「へ、へー・・・（・・・ほ、豊作の舞・・・？）」

「それと、明日からレギュラー全員昼飯は食堂だ」

「弦一郎何でだい？」

「みんなで米を食うからに決まっているだろ」

「そう。分かったよ」

「み、みんなでっスか？」

「ああそうだ」









次の日・・・。

「わー俺って学校の食堂来るのってはじめてなんっスよねー」

食堂には大勢の人がいた。

「ふふ、そうなんだ」

「はい。俺いつもパンなんで食堂に来ないんです」

「赤也・・・今日は米だ」

「はいっス・・・」

「なー真田ぁー・・・。何でもいいけど早く飯食おうぜー」

「うむ。今日はみんなの為に特別メニューを用意してもらった」

「えー何？どんなの？」

「名づけて“米定食”だ！」

一瞬その場の時間が止まった。

―――ちょっと待って！米がメインですかッ？！
 
みんながそう思った。

「今日は火薬ご飯をおかずに白い飯を・・・」

「待ってください！おかずもお米じゃないですか！」

「何か問題でも有るか？柳生」

「ええ。バランスが悪いです」

「しかし、もう作ってもらっている」

「・・・」

柳生は真田の迫力と作った人のことを思い、それ以上何も言おうとしなかった。

殆どは真田の所為だ。

「さぁ、みんな食え」

真田はみんなの前にその米定食を置いた。

本当に米だけだった。

「残すなよ」

そう言った真田は美味しそうにその米定食を食べていた。

「い、いただいまーす・・・」

米のみ、という不思議な感覚があったが味自体はとても美味しかった。

さすが真田が毎朝豊作の舞したことはある。



・・・数分後 。

育ち盛りの男子達は直ぐにその米を平らげた。

「ふぅー・・・ご馳走様でした」

「どうだった？」

「美味しかったっス」

「そうか。・・・ん？」 

「何っスか？」

「赤也・・・茶碗に米粒が残っているぞ」

「えっ？」

真田が言うとおり赤也の茶碗には米粒が残っていた。

「そして、精市。お前も残っているぞ」

「何だって？」

「だから、米粒が・・・」

「ふーん・・・。そんな細かいことを気にするからふけていくんだよ。ね、赤也」

にこっとはしているものの多分今の幸村サマのオーラはきっと黒に近いだろう。

「え、あ、その・・・」

赤也は狼狽している。

その時の赤也の目に留まったのはジャッカルだった。

「あ、ジャッカル先輩は、どう思います？」

「お、俺かッ？！」

ジャッカルは赤也よりもあたふたしていた。

「弦一郎はそれが原因で老けているのか。新しいデータ（いじるネタ）が増えた」

真田はガタッと席を立ち、ふらふらと食堂の端に座り込んだ。

「みんな俺のこと老けてるって・・・」

「「・・・」」

仁王と柳生はそんな真田の近くに寄っていった。

「真田、まあ、そうしょげなさんなって、のう、柳生？」

「はい、そうですよ真田君。多分老けているのではなく、口調や動作が全体的に老けて見えるだけですよ」

「ちょぅ柳生・・・ッ」

 「あ・・・」

〈真田は５０００のダメージを喰らった。〉

きっとゲームならこう出ただろう。

多分今の真田には５０００以上のダメージを喰らっている筈だ。

柳生は悪気がないから余計酷い。

この柳生の一言で真田は立ち直れなくなった。

それで真田の「日本人たるもの米を食せ！！」計画は終わった。




　　　　　　　　－ＥＮＤ－

冬月さん、本当に有難う御座いましたっ(*´Д｀*)
では、バルス!!